放射線や環境問題への理解と意識を深める「コミュタン福島」。

2011年の東日本大震災で発生した福島第一原子力発電所の事故のために、福島県では放射性物質が広大な地域に飛散。それにより、多くの県民が避難を余儀なくされるとともに、放射性物質による人の健康や生活環境への影響を軽減するため、汚染された土地や建物等の除染が進められてきました。そうした中、県産農林水産物の買い控え等、風評被害が発生。県産米の全量全袋検査の実施に象徴されるように、科学的な根拠に基づいた安全・安心への取組が行われてきました。このような福島県内の現状や放射線に関する正確な理解を促進し、また、原子力災害を経験した福島県の現状を伝える展示室等を備えた施設として、福島県環境創造センター交流棟「コミュタン福島」がオープン。コミュタン福島での学びや体験から得た知識や意識を、子どもたちや様々な団体が共有し、それぞれの立場から福島の未来を考え、創り、発信するきっかけとなる場を目指しています。

コミュタン福島の外観。建物から突き出たような半球型ドームシアターが映える。

科学的な知見を持った技師が広報に。追求するのは“楽しさ”。

「子どもたちが楽しめるか。それをいちばんに考えます。」と語るのは技師の西原聖礼菜さん。コミュタン福島で主にイベントや情報発信、各機関との調整等を行っています。技師とは各分野で調査・研究等を担う専門職でありながら、西原さんは広報として活躍しています。「学生時代に『コミュタンサイエンスアカデミア』を知って、私がやりたいのはこれだ!と思いました。」大学院在学中から理系女子の有志で結成されたサークルに所属して子ども向けの科学イベントを企画、運営してきた西原さん。「コミュタンサイエンスアカデミア」は小中学生向けに科学や福島県の環境について楽しく学べる講座で、自身の想いと大きく重なったそうです。その後、福島県庁の職員に採用され、1年目から福島県環境創造センターに配属。しかも念願の「コミュタンサイエンスアカデミア」を担当することになります。「やった!って思いましたね。それと同時に、環境に関する情報発信の最前線に立つ責任も感じました」と西原さんは語ります。

展示コーナーを解説する西原さん。リニューアルにおいても放射線に関する展示は敢えてそのままにしたという。

難しいことを、楽しく分かりやすく。自分ごとにしてもらうために。

西原さんが“楽しさ”を追求するのには理由があります。それはご自身の震災時の記憶です。中学3年生の時、仙台市の都市部で被災しましたが、沿岸部での津波や福島県での原発事故等を自分ごとに捉えられなかったのだそうです。「当時の関心を持てなかった自分を忘れないようにして、今は仕事と向き合っています。」2023年3月にリニューアルした展示室にも子どもたちの好奇心を刺激する工夫が随所に見られ、コロナ禍では来館者が減ったものの毎年9 万人以上もの来館者を迎えています。また、「ふくしまナラティブスコラ」は、高校生がふくしまの未来への想いを語る異色の事業。半年以上にわたり自身と向き合い、念(おも)いを届ける技術を学びます。これも身近な高校生が語ることで、ふくしまの未来をより多くの人に自分ごとにしてほしいという想いがあります。「環境科学の立場から伝えられるコミュタン福島の魅力を生かしながら、県民に楽しく自分ごと化してもらえるような情報発信をこれからも考えていきます」と西原さんは語りました。

エネルギークリエーターは、砂場で作られた地形に応じて、風力や水力等の再生可能エネルギーが生まれ、壁面と連動する体験型展示。

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福島県環境創造センター交流棟「コミュタン福島」

〒963-7700
福島県田村郡三春町深作10番2号
TEL:0247-61-5721
HP:https://www.com-fukushima.jp/

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