壁画アートカンパニーとの意気投合から生まれた、双葉町を彩るアートの数々。

髙崎丈さんは東京で飲食業を営む傍ら、2020年に壁画アートカンパニー「OVERALLs」とともに、双葉町の建物に地元住民のイラストやメッセージなどを色彩豊かに描くプロジェクト「FUTABA Art District」 を立ち上げました。近年の地震で倒壊したり解体されたりした建物もありますが、現在も双葉町に足を運ぶと街中で様々なアートを見ることできます。
きっかけは髙崎さんのお店にOVERALLsの代表赤澤氏が訪れた際、双葉町への思いや、故郷の力になれないかという気持ちを彼らに伝えたことでした。彼らは米ロサンゼルスで工場地帯や倉庫街をアートの力で人気スポットに変化させた“ART DISTRICT”を日本でも実現したいと考えており、髙崎さんの思いに共鳴したのです。その年の8月には作品第1弾が完成します。偶然、彼らがテレビ番組「情熱大陸」で紹介されるタイミングだったため、双葉町での取組も全国に知られるようになりました。

FUTABA Art District Vol./ HERE WE ARE~ヨイショ!~。双葉町産業交流センター近くにある「双葉中央アスコン」に描かれています。

故郷のために何ができるのかという葛藤。後押ししてくれたのは、地元の先輩からのメッセージ。

東日本大震災発生時、髙崎さんは双葉町の自分の店舗にいました。家族を車で探し小学校に避難。すぐに帰れると思っていたら川俣町に避難するよう指示されます。情報が錯綜する中、家族のことを考え関東に避難することに。「双葉町は原発もあり人口も将来的に5万人増えると言われていました。それがあっという間に戻れなくなった。状況と向き合う以外になく、覚悟が決まりました」と髙崎さんは振り返ります。
そのまま双葉町には戻らず、関東で修業時代に働いていた飲食店で働き始めた髙崎さん。2年が経ち、当時帰還困難区域だった双葉町に足を踏み入れると、震災発生時から時間が止まっているかのようでした。故郷のために何ができるのかを考える日々が続きます。県外居住者の自分が復興にどう関わってよいかという葛藤がありました。そんな思いを、同郷で地元のだるま市の運営に携わる先輩に伝えたところ「もっと関わってほしい」と大きく背中を後押しされたといいます。

震災発生時から、今も時計が止まったままの双葉町の消防署。

壁画アートで生まれた流れを止めないことが重要。行政との連携を促進した動き方とは。

オランダのアムステルダムで、廃墟となった造船所を観光地化した事例が髙崎さんの心に残っていたといいます。OVERALLsとの出会いでそれが形になり、第1弾の壁画アートが生まれました。「何かが動いた感じがありました。ただそれは花火やフェスティバルのような単発の動きで、その流れを止めないよう動き続けなければとも思いました」と髙崎さんはいいます。活動開始当初、壁画アートは個人の活動とみなされ行政との連携ができないことが課題でしたが、地元住民や後輩の協力で壁画を描く建物を探し活動をつづけました。第3弾制作のころから町長が現場見学に訪れるようになります。どのようにやるか、行程を説明しながら進めるHOWよりも、驚きや感動を与えるWOWを大事にした動き方をしたことで、町長たちに早い段階で自分たちの活動を理解してもらえる結果につながったのではないかと髙崎さんはいいます。

行政との連携を実現するため、タカサキ喜画という会社も立ち上げた髙崎さん。

人を動かす感動を双葉町から生み出すための新しい様々な取組。

壁画アートの取り組みを皮切りに、髙崎さんは双葉町に関わる様々な取組を開始し実行しています。例えば、南相馬市産の酒米をもとにクラフトジンを開発し、東北限定販売しています。また、髙崎さんは町での農業に大きな可能性を見出しています。町の農地は12年以上農業に使われず農薬が抜けた状態になっています。そこをベースに野菜の自然栽培をチャレンジしています。
復興とは元に戻すことではなく、新たな価値を創造して再生させることなのではないかと髙崎さんは考えます。「壁画アートを実現したことで、人は感動で動くという体感があって。例えば農業でもすごく美味しいものを提供するなど、価値を生み出していきたいんです」双葉町は世界に1つしかないフロンティアと髙崎さんはいいます。町で何かできないか考える若い人たちが集まってきていて、そういう人たちが動ける環境を作っていきたいという思いが、髙崎さんの原動力です。

クラフトジン「TREFOIL GIN(トリフォイル・ジン)」。1つ目の「ふたば」とともに東北限定で販売中。

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