

東日本大震災で石垣が崩落し変形した小峰城。ガイドはもうできないと思った。
東日本大震災では、白河市でも各所で土砂崩れや地割れが発生し、町のシンボルでもある小峰城も大きな被害を受けました。石垣は10か所が崩落し、全体的なゆがみや目地の開きの変形なども生じ、文化財被害としては最大規模の被害となりました。2019年3月、約8年の時を経て修復が完了しています。
北住雅雄さんはツーリズムガイド白河に所属し、震災以前から現在まで小峰城、南湖公園、白河関跡の観光ガイドをしています。「城や歴史が大好きなんです。私は泉崎村の出身で、子どもの頃から隣接する白河市にも小峰城にも憧れがあり、観光ガイドの仕事をずっとやってみたくて。」建築業に携わるかたわら、55歳でツーリズムガイド白河に参加。それから18年ガイドを勤めています。
震災時は白河にいました。空が暗くなり立っていられない程の大きな揺れの中、この世の終わりかと思ったといいます。震災の翌日に小峰城に赴くと、大規模な崩落のため立ち入り禁止でした。ガイドはもうできないとその時は思ったそうです。

「歴史や城が大好きです。来城者の方に白河や小峰城のことを説明できることがとても楽しい」と話す北住さん。
被災状況のガイドに加え、少しずつ観光のガイドも開始。そして約8年におよぶ修復工事が開始される。
北住さんは建築業だったため、震災後は小中学校の応急処置や仮設住宅建築に取り組む日々でした。その中でも、少しずつですがガイドとして、県知事や来訪者に小峰城の被災状況を案内するようになります。場内の公園など安全な領域については、2011年10月には一般の方も入場可能となりました。福島を応援するために来てくれる方や、城が好きな方などの来場もあり、北住さんはガイドを続けていきます。
小峰城の修復は2011年12月から開始しました。文化財石垣の修復であったため、石垣が構築された江戸時代の伝統工法が採用されています。工事は市民や城郭研究者から提供された写真をもとに、崩落した石材1つずつの位置を特定し、元の位置に積みなおすという途方もないものでした。1か所ずつ段階を経て修復に着手していき、2015年に三重櫓が修復完了し入城可能に。全ての修復が完了したのは、2019年のことでした。

修復され、2015年から入場可能となった三重櫓の場内の様子。戊辰戦争の傷跡も残る、長い歴史を感じることができる史跡です。
立入禁止が解除されて再度訪問してくれる人も。石垣の復旧に関するガイドも開始。
震災後、復興についての学習を目的とし、小中学生のお客様が増えたといいます。訪問後に手紙をくれる子もいてやりがいを感じるそうです。「場内立入禁止の頃に応援で訪問してくれた人が、立入可能になった後に改めて来てくれるケースも多く、嬉しいものです。」と北住さんはいいます。メディアの影響も大きく、取り上げられた年の来場者はとても大きなものでした。
小峰城のガイドの内容には震災前後で変化があり、以前は城の歴史に関する話が主でしたが、今はそれに加えて石垣の復旧の話をしています。例えば、現在の様子を見ると昔から何も変わっていないようですが、震災時にはもう元には戻らないのではと思うほどに石垣が大きく崩落し、場内各所に亀裂やゆがみなどが生じ変形したこと。それを約8年、伝統を守った工法で1つ1つ修復していったこと。江戸時代から続く城がたどってきた長い歴史を伝えるとともに、甚大な災害に遭った記憶と、そこから城を復旧させるまでにたどった道のりを来場者に伝えています。

崩落の激しかった本丸西面にて。築城された際の石垣づくりや、崩落後の修復の工程を話してくれる北住さん。
城も町も整備されたからこそ、記憶を伝えていくことが使命。未来に向けて続けていく活動。
震災の記憶を伝承していくためには、小中学生など震災後に生まれた人に話をしていくことが大事と北住さんはいいます。「小中学生くらいの子どもは、大人よりもいろんなことをよく覚えていてくれていて、ガイドで話したことも記憶に残してくれているんですよ。」
震災から時間が経ち、城も町も整備され震災の面影はなくなってきたからこそ、災害に対してどう備えるか、実際起きたら何をしなければならないか、自分たちはどうやって立ち直ったかを伝える機会を作り続けることが、被災した自分たちの使命と北住さんはいいます。
「小峰城は、今生きている人が生まれる前からここにあって、町や生活に溶け込んできました。これからも私たちとともにあってほしい存在です。」市民をはじめ多くの人々の思いを受けて修復された小峰城。歴史や被災、そこからの復旧の記憶を語り継ぎ、未来に伝えていくため、北住さんはこれからもガイドを続けていきます。

場内には修復の道のりを案内する様々な資料があります。小峰城案内所もあり、城の歴史や修復のことを深く学ぶことができます。
しらかわ観光ステーション
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